今回は、名産「木頭ゆず」の収穫が最盛期を迎えた「那賀町木頭」を訪ねました。 寒暖の差が激しいこの地は、香り豊かなゆずを育てるのに最適の場所だそうです。ここで「木頭ゆず」のみを使ってこだわりの商品づくりをされている「柚冬庵(ゆとうあん)」の榊野 瑞恵さんにお話を伺いました。

有限会社柚冬庵 榊野 瑞恵

有限会社柚冬庵 榊野 瑞恵

—— 「カーボン・オフセット」の活動に参加されたきっかけは?

主人が森林組合の組合長で、元々林業を営んでいたんです。木頭には林業をやってきた人が多い。なので、山への思い入れも強いし、こういった環境を保存していかないといけないな・・・と思っていたところ、ちょうどカーボン・オフセットのお話を聞いたんです。

カーボン・オフセットの活動を呼びかける、杉を植えるイベントに参加したりして、山で過ごす気持ちよさとか、料理をする楽しさとかを経験したのも大きかったです。参加費も手頃でしたし、森を守る活動に協力したいなと思いました。

—— 「柚冬庵」を始められたのはいつから?

平成18年に先代から引き継ぎました。それまでは、経営があまりうまくいっていなかったのですが、私の夫婦ともう1人の夫婦4名が出資して、2軒の農家で再始動しました。もの作りについてはまったく素人だったので、最初はいろいろな講習会に参加して勉強しました。
木頭生まれで、高校以外はずっとここで過ごし、そのまま嫁いで農業と子育てに追われていた頃です。白紙からのスタートでした。

—— いろいろな「学び」から始められたんですね。

柚冬庵

そうそう。人生で一番「学びました」(笑)。商売では見積書とか請求書、商品カルテなど、いろいろな書類が書けないといけないし、会計や経理も重要です。それを同僚が習得してくれました。
で、私が企画と営業を担当して。日曜市など、あちこちの催事に参加したり、展示会に出展したり。高速バスに乗って東京まで行ったことも何度かあります。今はだいぶ認知度が上がってきて、営業をしなくても注文が入ってくるようになりました。

当初は、本業が農家の女性ばかりなので「副収入があればいいや」という感じだったんです。
大量生産や効率化を前提として「まずは充填機などの設備を充実させてからの方が…」といったアドバイスをいただくこともあったんですが、それほど大きな産業にするつもりもなかったし、女性が手作りでできる範囲で、良い商品を作っていけばいいと思ってました。
とにかく始めてみないとわからないこともありますしね。「ダメならダメでやめればいい」というくらいの気持ちで始めたのが良かったのかもしれませんね。

—— 女性たちの本気度が、商品のデザインから伝わってきます。

柚冬庵

柚冬庵

引き継いだ頃、ジュースの瓶は大きな5合瓶でした。デザインもいまいちだし、自分の友達に勧めたいけれど、このデザインではちょっと・・・と思うことが多くて。思い切ってデザインを一新することにしました。

デザイナーさんの講習会にも参加しましたよ。せっかく木頭という田舎から出す商品なので、やさしい、素朴な感じを強調したいなと。作りあげるまでには1年くらいかかりました。

最初はロゴや商標などもなかったので、ゆずの葉っぱをデザインに採り入れてもらいました。ゆず関係の会社がデザインによく使うのはゆずの実なんですが、うちは葉っぱだけにしました。イメージカラーもグリーンで。デザインをしてもらって5年になりますが、ボチボチと定着してきています。

—— 始められた頃、「こんな会社にしたい」とイメージされていたことは?

私はいろんなところに食事に行ったりするのが好きなので、「いつか、こんなカフェに置いてもらいたいな」と考えていました。
大手のスーパーや量販店では絶対に太刀打ちできないと思っていたので、ちょっと雑貨屋さんに置いてもらえるようなおしゃれな商品にしたいな、と。会社の規模は小さいですし、一度にたくさん売れても困るので、自分たちで作れる範囲のものを、と考えていました。

高松にある「まちのシューレ903」に行くと、いつもじっくり見て回るんです。
「ここに置いてほしいな〜」と思いながら見ていました。その念願が叶って、やっと最近置いてもらえるようになったんですよ。そうやって、自分が置いてほしいと思っていたところに少しずつ商品が並ぶようになってきたのはうれしいことですね。

—— ネットでの売り上げはいかがですか?

柚冬庵

ネットではギフト商品がよく出ます。「この商品」というよりも「この価格帯で選ぶならこれ」みたいな。自分がもらうならこんなラインナップがいいかな?などと考えながら商品作りをしているのが、女性の皆さんに受け入れられているのかなと感じています。女性って「自分で買えないけど、もらうとうれしいもの」がいいじゃないですか。あと、ゆずの果実自体を売ったりもしているんですよ。

柚冬庵ホームページ:http://yutouan.com/

—— 最近は自分でジャムなどを作る方とか増えていますものね。

ゆずの果実は、やっぱり皮は美しい方が重宝されます。「木頭ゆず」はジャムを作っても、えぐみがなくて本当においしいと思います。料理の器としても使ってもいいですよ。黄金色に輝いている器は料理が引き立ちます。

あと、老人ホームから「冬至の時期にお風呂に浮かべたい」という要望もあるんです。ゆず湯はいい香りがするので、ホントおすすめですよ。
ゆずは棘が多くて収穫が大変なんです。だから皮の手袋をはいて、厚手のジャンバーを着て、帽子もしっかり。自分を傷つけても、ゆずは傷つけないようにそーっと(笑)。
高いところから落とすとせっかくの香りが飛んでしまうので、はしごに登って大事に収穫しています。山の方にあるゆずは放っておくとサルなどの被害にあうので、「地域おこし協力隊」の若者たちが来て収穫を手伝ってくれています。

—— 一番売れ筋の商品は?

ポン酢のマコちゃん

ポン酢のマコちゃん

なごみ柚子

なごみ柚子

「ポン酢のマコちゃん」と「なごみ柚子」ですね。 「マコちゃん」というのは、初代の社長、うちのおじいちゃんが「マコト」という名前だったので。やはり、自分たちもよく使う商品が一番売れてます。
ポン酢は化学調味料を使っていないので、飽きない味なんです。このあたりではゆず酢と醤油をいろんな料理にかけて食べるので、自分たちが使いやすい味にしています。

ポン酢のマコちゃん」は、ゆずの果汁と鰹だし、あとはお醤油やみりんなどで作っています。お鍋だけじゃなくて焼き肉なんかにも合いますよ。

なごみ柚子」は、手搾りした柚子果皮をグラニュー糖だけで3日間炊きあげて乾燥し、まわりに寒梅粉をまぶした甘露煮です。果汁を搾った後の皮を再利用できないか考えてお菓子にしたんですが、ゆずの香り、ほどよい苦みが後を引くと人気なんです。

—— カーボンオフセット以外にエコな活動をしていますか?

果汁はジュースにして、皮はジャムにして、なるべく捨てるところがないようにしています。
一部の商品では、今まで瓶に入れていたものをビニールのパッケージにしました。そうすることで、山の中まで瓶を輸送してくる時にかかった費用やガソリン代などをカットできました。お客様が捨てる時も、瓶ほどかさばらないのがいいと思います。現場でも場所を取らず、軽いので作業もしやすいですし。

—— これからはどんなことにチャレンジしたいですか?

5年くらいのスパンで、次々と始めないとダメだと思うんですよ。6次産業といわれますが、「作ったものを加工して食べる」というところまで完結しないとダメだと。

今考えているのは、木頭には宿泊する施設がないので、使われていない空き家を使って、農家民泊をしてはどうかと。柚子採りツアーとかもいいですよね。考えているだけではだめで、いろいろ始めてみないとわからないこともあるし。
一番は「地域にいる」ということ。地域には人がいないとダメだし、そのためには仕事がないといけない。若い人のために雇用が必要。ここから人口を減らさないというのが今の目標です。生活ができないと、ただ「帰ってこい」といってもね。

那賀町木頭にお邪魔したのは、本格的な寒さを迎えつつある11月。
奥深い山の緑に、黄金色に輝くゆずの実がとても美しく映えていました。現状に満足することなく、常に新しいこと、おもしろいことを考え、即実行にうつす榊野さんのバイタリティに圧倒されました。
「利益優先」「企業の拡張」といった方向とはちょっと異なる、女性らしい、しなやかな働き方がとても魅力的でした。

 次々と新しい風を起こす「柚冬庵」!なんとカフェもやってます。

最初はお年寄りの食事サービスを始めようとスタートしたカフェ「くるく」
近所の方々はもちろん、町外からの来店も増えて、1年と少しで1,000人以上が来店するまでになりました。
木頭の四季折々の野菜や魚、特産のゆずを使った一汁一菜の郷土料理をお手軽な価格でいただけます。心も体もほっこりする、やさしい料理と美しい山の風景をお楽しみください。※ゆずの収穫期など、繁忙期はお休みの時があります。営業日は、以下のホームページにてご確認ください。

柚冬庵 カフェ「くるく」:http://kuruku.net/
イベントなどの最新情報はfacebookから:https://www.facebook.com/yutouancafe.kuruku

どこで買えますか?

徳島県内では、阿波おどり会館、櫻茶屋、道の駅、四季美谷温泉などで販売しています。東京では、日本百貨店(秋葉原ちゃばら、吉祥寺、御徒町店など)、有楽町交通会館の「むらからまちから館」、大阪では「みちのたより」、香川県の「まちのシューレ903」などで販売しています。お取り寄せもできます。
詳しくは、柚冬庵のホームページをご覧ください。

柚冬庵ホームページ:http://yutouan.com/
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